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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

なおまた。

昨夜来、丹波越えに向った高山、中川の二隊は、十四日朝、亀山城を包囲していた。けれどここにはもう光秀の家族はいなかった。一子十兵衛光慶が留守している筈と思われたが、それも見あたらなかった。老臣隠岐五郎兵衛は前日病死していた。そのほかこれという程な将士もいない。為に、ここではほとんど何らの抵抗もうけることなく寄手の入城を見ていた。

明けて十四日というこの日頃には、中央以外の地方諸侯は、どういう方策を決していたろうか。

まだ依然たる昏迷中にあったといっていいが、さすがに海道の徳川家康と、越前の柴田勝家とは、やや積極的な動きを示していた。

勝家は、養子勝豊、勝政、その他の諸将をすでに先発させ、自身も北ノ庄を出て、山越えに、近江へ急いでいる頃であった。――もちろん上洛を遂げて、故主のあだ光秀と一戦を果さんために。

家康の徳川勢も、同様の目的のもとに、今十四日には、すでに熱田まで来ていた。そしてなお京都へ向って続々行軍中であった。

すでに遅しというほかはない。光秀はすでに破られていた。しかもその光秀と同様な誤算を、家康もまた勝家も抱いていた。――秀吉の反転突進が、さまで鮮やかに迅速に、てきぱきとこの大世転を処理し終っていようとは、なおまだ思いもよらぬこととしていたのである。