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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

「それがしの申し条は、はや尽しておる」

「いや、あれから各※(二の字点、1-2-22)の詰所へさがり、半刻ほどの休息の間に、風模様は変った。柴田殿も、考え直したらしくみえる」

「参ろう」

秀吉は立った。長秀は思い入れの微笑を見せたが、それにニコともせず、秀吉はもう先に台子の間を出ていた。

勝家は、眼でじろと彼を迎えた。

座中一同も、ほっとしたかのようである。議場の空気は前とちがっていた。勝家は折れて、秀吉の提議を容るべし、と確言した。ここに、三法師を相続者と定める議案は一決した。

勝家の譲歩によって、

「めでたい、めでたい」

と、一瞬、大評議場は、危雲を払って、解けあう和気に醸された。

「三法師君を、天下人と仰ぎ奉ること、各※(二の字点、1-2-22)にも御同心、勝家にもはや異存なし。祝着、祝着」

彼もしきりにいっていた。自説の形勢悉く非なるを見て、にわかに前言を撤回し、からくもこの場を切り抜けたというかたちである。

がなお、彼として、ひそかに期すものはあった。

それは次の議案――旧明智所領の処置――つまり領土分配をどう割り振るかの問題である。

これが直接、諸将の利害にかかわる実質的懸案だけに、相続問題以上、ひと揉めはまぬがれまいと予想されていたが、案外そうでなかった。