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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁

青空文庫

「まず一浴してその後のことといたそう。あの大雨に、鎧下着まで濡れひたったせいか、湯が恋しさよ」

つぶやきながら室を出たが、ふと、侍たちを顧みて、

「堀どのは、どこに休息しておるか」

と、訊ねた。

「桐の間におられます」

と告げると、秀吉はつかつか立ち寄って、そこを覗いた。堀秀政は濡具足を側に置いて、寛いでいた。

「久太郎どの。どうだな。きつかったであろう」

「何の。それがしは、あなたより十も若い。あなたこそ、随分お眠そうであった」

「ははは。正直、まだ眠たい。――いま風呂の湯が沸いたところだが、実は、長浜の母の許から使いが見えておって至急会いたいと申すゆえ、先へ御免蒙る。お許は後で秀勝(信長の子。秀吉の養子)とでも一緒にお入りあれ」

「御会釈でおそれ入る。さあ、どうぞお先へ」

秀吉の大股な歩みを追ってゆく家臣たちの跫音も忙しげである。湯殿の窓には雨後の朝陽が美しく刎ねていた。このとき時刻は八日朝の巳の刻(午前十時)頃であった。

ここのは蒸風呂でなく、中国風の浴槽だった。秀吉は、湯へ肩まで沈めて、

「あ。あ」

と、大きく肺を呼吸させた。

湯気の中なる彼の顔へ、高い櫺子から日光が降りそそいで来る。