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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁
平伏している使者を見るや、
「無事か、何かあったか。――そちのこれへ来るまでに、母上には、どう遊ばしておられたか」
と、秀吉は早口に訊ねた。
この使者も例外なく疲労しきった態であった。病人の喰べるような物を喰べ、一室に休んでいたところである。そこへ何の予告なしに秀吉が入って来て、直接、あれこれと早口に訊ね出したので、彼はひどく慌てていた。
「はい。御母堂様にも、奥方様にも、まずは御無事でいらせられます」
「そうか。しかし長浜の城は、よも無事ではあるまい」
「さればで。――てまえが長浜のお城を脱して来たのは四日の早暁でございましたが、その時もうお城へは少数の敵が襲せ始めておりました」
「明智方の誰の手勢か」
「いえ。浅井の旧臣阿閉淡路守の浪人兵で、おそらく光秀に加担してのことだろうと思われまする。けれど、てまえが安土から瀬田へと急いで来る途々のうわさでは、明智の将の妻木範賢の軍勢が長浜を目ざして続々下って行ったと聞きました」
「そちの出立が四日とあれば、以後の安否は知るよしもあるまいが、留守の者どもの覚悟はどう決めておるか」
「所詮、籠城するほどの御人数もおりませぬゆえ、万一のときは、御母堂奥方様などを、どこか山深き地へお移し申しあげて、あとはあとのことと、侍衆は死を期して申し合わせておられました」