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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 頁
宵の頃からいちめんに掻き曇っていた空から折々電光がひらめいて、遠く近く雷鳴も伴っていたせいであろう。
「天王寺辺から東のほうは、ひどい大雨だそうな」
大坂表から来た早馬の者にそう聞いた哨兵が、共に哨戒に立っている友の影へ向って話している。
「この辺はポツーとしか降らないが、この風はどこかで降っているようなあんばいだ。あすは雨かな」
「嫁入りの晩と、戦いの出がけに降るのは、縁起がいいというから、ざッと来るのもいいだろう」
「敵もそう云っているかも知れまい」
「大きにそうだが、同じ大地へ天から降る雨でも、光秀の部下とおれたちとでは、濡れ心地が違うだろう。みろ、馬さえあのように勇んでいる」
「よかった、おれたちは」
「なにが」
「明智の家中でなくてさ」
「ははは。まったくだ」
闇の中の人声を聞きとめて、秀吉はふと佇んだ。昼間、快睡したせいか、眠れぬままに、彦右衛門と茂助をつれて野営している士卒の様子をそっと見廻って来たところだった。
「彦右衛門。聞いたか」
秀吉は顧みた。いま、哨兵が大勢で語り合っていたことばをさして云ったものであることは勿論である。
「戦いは、勝っておる。