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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

故雪斎和尚が常に彼へ云っていたからである。

(あの小冠者を、いつまで籠の鳥の質子と思うていると間違いまするぞ。今川家の廂に巣喰うて満足しておる燕雀ではおざらぬ。大鵬の雛は、雛のうちから、大鵬になる心得をもて扱っておかぬと、飼い馴れぬものでおざる)

そう聞いても義元は、年久しく信じきれなかったが、加冠して以来、めっきり大人に見られて来た元康の言行や、初陣ぶりなどを見るごとに、雪斎の言葉が思いあたるのであった。

「よかろう。然らば、大高救援の儀、きっと、つつがなく致すであろうな」

「身命を賭して、必ず御安心の相成るように仕ります。――多年御養育うけました御恩返しの一端にも」

と、元康はいった。

彼の身を、質子として、今川家に軟擒しておくことは、政略であって、慈悲ではない。三河併呑の策謀ではあるが、同情や善意ではない。

――にも関わらず、元康は、それを養育を享けた恩といっているのだ。きょうばかりでなく、常に元康は、義元に対して、恩義を感じている容子を何かにつけて表わした。

義元は、自分の肚の底に思い較べて、ふと、不愍を覚えた。――これほどまでに、この一質子は、自分を頼り自分の与えている生に恩を感じているのかと思って。