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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

いや、又右衛門としては、充分、順序を追ってはなしているつもりなのだが、藤吉郎の期待とは、余りに話題が離れて来たのだった。

「――そうじゃ。あの前田犬千代どの、家がらもよい出だが、頻りと、人を介して、寧子を妻にと、求めて来られるのじゃ」

「……ははあ」

返辞というより、嘆息に似た声を洩らした。忽然と、強敵のあらわれた感じである。何よりも先に、犬千代のすぐれた背丈が、気もちの上に、のしかかって来た。また、秀麗な眉目や、明晰な言語や、お小姓組に育って、行儀の上品なすがたが、その敵対感の中に、往来しだした。猿、猿、と人がよぶのを、自分でもやむを得ざることと、認めて来たほど、彼は自身の容貌には、元より自信がない。――だから彼にとって、美男ということば程、きらいなものはなかった。前田犬千代は、その美男なのである。

「寧子どのを、おやりなされるつもりなのですか」

思わず、話の先を越して、こう訊いてしまってから、彼も、ちょっと面目を顧みた。

「いや、何」

又右衛門は、そこでかぶりを振って、胸をのばすと、急に思いついたように、冷えた杯を唇へ当てて、

「親としては、あの温厚で沈着な犬千代どのなら、よい聟君と、実はよろこんで――約束までしてしもうたわけでござるが、なんとよ、近ごろの娘は、親の眼がねにも、そのことばかりはと、素直には、頷か