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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《新潮記(しんちょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 頁

青空文庫

でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)んではいかん、讃岐守どのはこの国のあるじだ、警護を配るのは当然のことではないか。そう云ってきびしく妄動を禁じたので、あやうく事は起こらずに済んだ。

頼胤はそれから半刻ほどして到着した。供まわり二十人ほどの微行である、左近は式台まで出迎え、そこからつれだって客殿へはいった。左近頼該は四十三、頼胤は四十一歳、どちらかというと弟のほうが老けてみえるのは、幕府の枢機に与って、激しい時代の潮流と闘っているためだろうか。左近はゆったりと肉の厚いからだつきで、唇のあたりにたえず穏やかな微笑を湛えている、ぜんたいに田園の隠士という風格があった。

「貞どのはお痩せなすったな」

左近は頼胤の幼な名貞五郎を呼んでそう云った。挨拶が済むとすぐのことである、頼胤は兄のうちとけた調子に心をうごかされたようすで、手を頬にやりながら苦笑した。

「不敏の身で人がましい大役に奔走しているからでございましょう、貞五郎などはもう隠居をすべきときでございます」

「みなそれぞれに骨の折れる時勢だから、御苦労はつねづねお察し申している、……まして貞どのにはこの左近などという邪魔者があるので、なにかとお心をいためることが多いであろう」