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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《新潮記(しんちょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 頁
述懐するような言葉だったが、頼胤には思いがけなかったので、ふっと眉を曇らせながら兄の眼をみた、左近は穏やかな微笑を含んだまま、べつに他意のないようすで弟を見かえしていた。
「この頃はなにか御宗旨に凝っておいであそばすとうかがいましたが」
頼胤は兄の言葉には触れず、話頭を転じた。
「凝るというほどでもないが」と左近はしずかに答えた、「ちょうど世の中のありさまが似ておるので、元寇の役のことを少し調べていたら、僧日蓮の宗論に眼をひかれた、ここで披露することもないだろうが、日本国体というものを中心にした考え方、殊に宗教を大陸の影響から離脱して、自主的に確立しなければやがて国家の大難を招来するだろうと予言しているところなどは、なかなか肯綮に当っていてするどい、その日本を主とした宗教観は現在にも有要だと思えるので、ひまひまに読んだり話を聞いたりしているようなわけです」
「それは立正安国論とかいうのですね」
「それにもある、ほかにもいろいろはげしい論文がある、いまはどちらにしても」と左近はさりげない調子で付け加えた、「文にも武にも、わが国体の尊厳というものを煥発することを中心にすべき時だ、そのためには庶民の耳に入りやすい宗教なども、これでなかなかお役に立つと思う」