輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《新潮記(しんちょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 頁
いくたびも耳にし書で読んだ「この太洋のかなたに亜米利加あり」ということが、いまこの海を前にしてはじめて秀之進の実感にきた。
「――大きいな」
かれは深く息をつきながら、いくたびも圧倒されたような声でそうつぶやいた。
吹きわたって来る風は海の青に染まっているかと思われ、むせるほども潮の香に満ちていた。眼もとどかぬ沖のかなたで盛りあがる波は、運命のようにじりじりと、高く低くたゆたいつつ寄せて来る。そして磯の近くまで来るとにわかに逞しく肩を揺りあげ、まるで蹲んでいたものが起ちあがりでもするようにぐっと頭を擡げるとみるや、颯と白い飛沫をあげて崩れたち、右へ左へとその飛沫の線を延ばしながら歓声をあげて水面を叩き、揺れあい押しあいつつ眩しいほど雪白の泡となって汀を掩う……これらはすべて或る諧調をもっていた。旋律のない壮大な音楽ともいえよう、いや旋律さえ無いとはいえない。耳でこそ聞きわけられないが感覚には訴えてくる。ただその音色が現実的に説明しがたいだけだ。……秀之進は云いようのない感動にうたれ、自分もその海景のなかに溶け入ってしまったもののように、砂丘に腰をおろしたまま惘然と時の経つのを忘れていた。