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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《新潮記(しんちょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 頁

青空文庫

かなり久しい時間が過ぎてから、ふとかれの耳に遠い人ごえが聞えてきた。風の具合で高くなったり消えたりする。高くなるときは言葉まではっきりと聞きわけられた。

「夷狄を討つ……先生が仰しゃるのは……それは蒙昧の説だ」

「おれは思う……まあ黙れ」

「これだ、これが先決問題だ……蒙昧であるかないかは……」

なにか議論をしているらしい。ふりかえってみると、四人づれの若い武士たちが、砂丘の下をこちらへ歩いて来るのがみえた。そして秀之進がふりかえるのといっしょに、かれらもまた一斉にこっちを見た。――ゆうべおなじ宿へ泊った客だな、秀之進はそう思った。

四人はずんずんこちらへやって来たが、なかで眉毛の太く眼のするどい、背丈のぬきんでたひとりが、大股に秀之進のそばへ近寄りながら声をかけた。

「やあ、昨夜はやかましかったでしょう」

「…………」どうして自分を同宿者と知っているのか、秀之進は不意をつかれて答えに困った。

「朝になって女中からあんたが隣室に泊っていたと聞きましてね、それなら少し遠慮するんだったと後悔しましたよ」

「そんなことはありません、よく寝ました」

「おいこっちへ来ないか」