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ほしのくんのにるいだ

新版・星野くんの二塁打

吉田 甲子太郎

線上閱讀吉田 甲子太郎《新版・星野くんの二塁打(ほしのくんのにるいだ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 10,945 字 · 22 頁

青空文庫

「なあんだ。マーケットの売り出しか。」

だれかがばかにしたようにいった。

それでも、みんなは動かずに見ていた。

「おや?」

光吉は自分の目をうたぐった。先頭に立って、二メートルちかくもある旗ざおをかついでくる女の人が、見たことのある人のように思えたのだ。

もういちど見なおすと、いきなりぐいと何かがかれの胸をつきあげてきた。

「おかあさんだ!」

頭に手ぬぐいをかぶり、えりに「丸市マーケット」と白くそめぬいた赤いはんてんを着て、地下たびで足ごしらえをしたすがたは、いつもとまるでようすはちがっていたが、自分の母親を見あやまるはずはなかった。

手ぬぐいのはしから、そそけた髪がのぞいて、風にゆれている。つめたい旗ざおをおさえた両手の指は、かじかんでふくらんでいるように見える。まい朝おべんとうをつめてくださる手、まい晩「おやすみ。」とやさしくふとんのえりをおさえてくださるその手の指が――。

「おかあさん!」

だんがんのようにとびだしていって、母の首ったまにかじりつきたかった。のぼりを母の手からひったくって自分の肩にかつぎたかった。

だが、母はそしらぬ顔で、楽隊に足なみをあわせて進んでいく。