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ほしのくんのにるいだ

新版・星野くんの二塁打

吉田 甲子太郎

線上閱讀吉田 甲子太郎《新版・星野くんの二塁打(ほしのくんのにるいだ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 10,945 字 · 22 頁

青空文庫

五

まわりには友だちが、自分をとりまいて立っている。

とびだすことはできない。

光吉は、ボーッと目のまえがかすんでくるような気がした。

「つまんないや。いこう。」

だれかがいった。しかし、その声は光吉の耳にははいらなかった。

きょう、お昼に、かれが、例によって全甲の通信簿を見てもらおうと意気ごんで帰った家には、昼めしのしたくをしたちゃぶ台が、白いふきんをかぶって、さびしくかれを待っているばかりで、母のすがたは見えなかった。そのわけもはじめてわかった。母は、病院から帰ったあと、ハンケチのへりかがりをしていただけでは、この年の暮れが越せないので、新しいしごとをはじめたのだ。

五

その夜、かれは、思いこんだようすで、楽隊の旗もちのしごとはぜひ自分にさせてもらいたいと熱心にたのんだ。しかし「学校を卒業するまでは、家のくらしのことなど気にするものではありません。」という母のひとことで、ぴたりととめられてしまった。

だが、よく日から学校の休みになった光吉は、母が病院からまわってくる時刻をはかって、丸市マーケットへ出かけていった。どうしても母にかわって旗もちがやりたかったのだ。