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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《日本イデオロギー論(にほんイデオロギーろん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 頁

青空文庫

この一般的な事情は高橋教授の「体験の全体」と「全体と部分」という特殊な二つの言葉の内によく現われている。思うに体験という概念は、現代に於ける観念論が観念を云い現わすために最も工夫を致した処のものであり、又全体と部分という連関は現代に於ける形而上学的論理(各種の形式論理学)の新しい一つの着眼点である(吾々はフッセルルの分析を知っている)。云わば高橋教授は現在、マルクス主義の洗礼によって広く世間の問題になっている弁証法に対抗するために、この体験の全体―部分の論理を固執していると見ることが出来るだろう。

尤も教授は古くからの思索家で、之は一朝一夕で出来上った「立場」ではなく、教授の思索生活の初めからその脳裏を往来していた観点だったようだが、併しそれにも拘らず「全体」への要求は極めて直接的であるだけに原始的な未開な要求だとも云えなくはない。こういう原始的な要求は、その形式を他のものに代えない限り、決してそのままでは満されないのが普通だが、それが教授に於ては、依然として同じ「全体」という形式の下に、そのまま発達して来たものであるらしい。云わば之は原始的なまま発達した文明のようなもので、教授が私かに東洋的(恐らく又日本的)な思考を愛好しているらしいのも、ここから見ると決して無理ではないようだ。