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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《日本イデオロギー論(にほんイデオロギーろん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 頁

青空文庫

今日、日常何の気もなく使っているこの言葉には、前に云ったブルジョア哲学的常識の破片の他に、この新しいマルクス主義的観念の断片が混淆していることは勿論であるが、この後の方の要求こそが、この日常語の唯一の科学的な部分だ。

ブルジョア歴史哲学による進歩や発展の観念は、根本に於て譬喩の性質を持っているが、マルクス主義による進歩の譬喩は譬喩としてももっと巧みに出来ている。それによると、歴史の車輪を前方に向って、即ち之まで転って来た方向に基いて(必ずしも一直線ではないが)転ばすことが進歩だというのである。そして之を逆に転ばそうと試みることが反動だというのである。これは誰でも知っている譬喩だが、この譬喩の科学的なうまさを今一寸説明しよう。

ブルジョア哲学常識による進歩の観念によると、現状の事物が目標乃至目的物へ向って進んで行かねばならないことになっていた。目的に向って歩いて行くのだが、これは譬えば磁極が磁石を引っ張るように、又地球が物体を引くように、一種の「遠隔作用」を仮定している表象だ。物理現象の遠隔作用ならば今日では充分に合理的に説明される可能性が示されているが(場の理論)、歴史理論や社会理論に於て遠隔作用に類するものは、現実の現状と未来又は理想の状態との間の歴史的因果必然に就いての不可知を意味するに他ならぬわけ