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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁

青空文庫

たといその事情を訴えたところで、夫が日頃の気性としてとても取り合ってくれないのは判っているので、奥方は一人で胸を痛めた。そのうちに吟味の日がだんだんに迫ってくる。苦労が畳まって毎晩いやな夢を見る。神籤を取れば凶と出る。奥方はもう堪まらなくなって、何とかして吟味に出ない工夫はあるまいかと、家来の平助にそっと相談した。

女の浅い知恵と中小姓の小才覚とが一つになって、組み上げられたのが今度の狂言であった。又蔵もこの事件には関係があるので、否応なしに抱き込まれた。おとなしい大三郎にはよく因果を云い含めて、途中からそっと引っ返して来て、夜のあけないうちに平助の長屋へ連れ込んだのである。そうして好い頃を見計らって再び大三郎を引っ張り出して、例の神隠しといつわって内外の眼を晦まそうという魂胆であった。その秘密の仕事を請け負った二人に対して、奥様の手もとからは二十五両の金包みが下がったのであるが、狡猾な平助はまずそのうちから十五両を天引きにしてしまって、残りの十両を又蔵と二人で山分けにしたのであった。

「これだけの仕置をさしておいて、二人あたまに十両はひどい」と、又蔵は不平らしく云った。