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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁
それが未練よ」と、女は焦れるように云った。「疑いがかかるどころじゃない。もうすっかりと種をあげられてしまったんだから、うろうろしちゃあ居られないんですよ。お前さん、鈴ヶ森で獄門にかけられて、沖の白帆でも眺めていたいのかえ」
「よしてくれ。聞いただけでも慄然とする。そりゃあ私だってこうなったら仕方がない。そうして、これからどこへ行く積りだ」
「駿府の在にちっとばかり識っている人があるから、ともかくもそこへ頼って行って、ほとぼりの冷めるまで麦飯で我慢しているのさ。お前さん、どうしても忌かえ」
「いやという訳じゃあないが、毒食わば皿で、そう度胸を据えるくらいならば、こっちにもまた路用や何かの都合もある。五両や十両の草鞋銭でうかうか踏み出すのはあぶないからね」
「五両や十両……」と、女は呆れたように云った。「お前さん。たったそれぎりかえ。だから、さっきもあれほど念を押して置いたんじゃありませんか。嘘、きっと嘘に相違ない。お前さん、もっと持っているんだろう。お見せなさいよ」
「いや、まったく十両と纒まっていないのだ。じゃあ、こうしてくれないか。ここに八両と少しばかりある。