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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

クラス会などで大酒を飲んでも、宿酔をしない。要するに若かったのだ。彼も三田村も西東も小城も。

五郎は女将から一度だけ誘惑されたことがある。元亭主の軍人が再婚して、披露宴の招待状が来た。そのやり口に腹を立てて、彼女は取乱した。今夜は眠れそうにないというので、彼は勧めた。

「催眠薬を上げようか」

女将は催眠薬を酒といっしょに飲み、彼を誘惑した。彼は拒否した。

「小母さん。あんたはいつか僕のことを、中途半端な人間だと言っただろう。無理をしないで生きて行けとも言った。お説の通り、おれは無理をしたくないんだ」

今にしてみれば、いくらか残酷で散文的な断り方だったと思う。しかし彼にも言い分はあった。級友の西東という男と、女将は関係を持っていたからだ。――

煙草は乾いた口に不味かった。いがらっぽく、すぐに吸口が唇に貼りつく。川から吹いて来る風は、泥のにおいがした。

西東はそのためかどうか、落第した。中傷の手紙が行き、西東は熊本に戻らず、私学に入る予定で、東京に赴いた。女将は下宿をたたんで、西東を追っかける。私学に入る前に召集が来て、中国で戦死した。女将は場末のバーの女給になった。