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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 頁

青空文庫

――はあ、それは。

「甲斐は誰とでも不即不離のつきあいしかしないが、佐月とだけは深く心を許しあっていた、その佐月の葬儀に来ないという理由が考えられるか」

――それは、松山の人びとも不審し、立腹しているようでございました。

「怒っていたと」

――船岡どのの、負傷した仔細がわかったのです。

「伐っていた木が倒れて」

――いや、事実は鹿の角にかけられたとのことです。

「鹿の角にかけられた」

――追っていた鹿を射損じ、逆に角にかけられたのが事実だと申します。

「それは面白い、あの山男らしくて面白い、そうか、鹿の角にかけられて、それでけがをしたのか」

――それがわかったものですから、松山ではいっそう穏やかならぬようすでした。

「話しというのはそれか」

――これから申上げます。

「聞こう」

――船岡どのが津田家へ、縁談を申しいれたということです。

「なんと」

――津田玄蕃に伊久と申して、二十八歳になる妹がおります。それを欲しいと、人をもって申しいれたと聞きました。

「誰から聞いた」

――玄蕃どの自身からです。

「松山でも知っているか」

――まだどこへも内聞とのことでした。

「津田では承知なのだな」