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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 頁

青空文庫

――承知つかまつりました。

「その証拠を挙げるまで待つとしよう、十左がそこまでやったとすれば、仙台でも騒ぎだすに違いない、そのもようをみてからでもおそくはないかもしれない、なんだ」

――申上げます、伊東新左衛門どのがおめどおりを願っております。

「新左衛門が出てまいったか」

――一昨日、上府されたとのことでございます。

「待たせておけ」

――はあ。

「隼人、どう致そう」

――また誓紙の件でございましょう。

「岩沼(田村右京)は出すと申しておる。おれも出してもいいと思う、さしてこだわるほどの条目ではない、隼人もみた筈だ」

――はあ、第一は忠言あらば卑賤の者たりとも採用すべきこと、第二は親疎によって賞罰を軽重せず、阿諛の者を大敵とすること、第三は両後見、互いに隔心なきこと、以上でございました。

「それだけだ、なんの変哲もないものだが、誓紙にしてくれということと、諄くせきたてることが訝しい」

――拒めば国老にならぬと申すのですな。

「それだけではあるまい、拒めばその変哲もない条目が生きてくる、すなわち、それを承認できないような事実がある、ということになるだろう」

――それはおぼしめし過しかと存じますが。