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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 頁
――吉岡(奥山大学)の罷免は確定したようだ。しかしその時期は少し延びる、おそらく秋になるだろうと思う。里見十左衛門が吉岡問責のため、一ノ関を訪ねたというのは事実だ、あれほど一ノ関を嫌っていた十左が、私のところへは来ず、みずから一ノ関を訪ねたのは吉岡排撃の一徹からであろう。いかにも十左らしいけれども、こういう一徹が、やがて彼自身を誤りはしないかと気がかりである。
――笑い話しを一つしよう。先日、私は一ノ関といっしょに酒井邸を訪ね、雅楽頭と面会した。国老就任の挨拶にいったのであるが、たいそうなもてなしを受けた。酒井侯とは、まえにいちど湯島の家で会ったことがある。これは帰国したときに話したから、たぶん隼人も記憶しているであろうが、侯はあのときのことを根にもって、久世大和守どのが同席されているにもかかわらず、むきになって私に当りちらされた。小書院の対面でも可笑しいことがあったが、数寄屋で酒宴になってから、酒井侯はついにがまんを切らしたとみえ、「盃をくれる」と云いさま、私に盃を投げつけた。湯島のときも、盃を投げそうにしたが、ついに実演してしまったわけである。