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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 頁
――雁屋は海産物の問屋と、回船を兼ねている関係で、まえからその留守役と昵懇であったと申します。
「なにか商法かもしれぬな」
――はあ。
「原田は勝手が苦しいといって、いつか胡桃味噌などを作らせたことがある、うまくゆけば大掛りに作って、船岡の財用にするつもりだと云っていた、こんども国の物産を加賀と交易でもしようということではないか」
――それならば、密会などをする必要はないと存じますが。
「密会ということは、かの者が申したのであろう、これまでにも同様のことがしばしばあり、事実をつきとめるたびに空の袋を掴んだ」
――はあ。
「念のために、できたら密会の始終をさぐれと申せ、おそらく袋はまた空であろう、おれはそうだと思う、おれはそう思うのだ、原田という男はあれだけの人間で、人の裏を掻くとか、ひそかになにか企むなどということのできる質ではない、彼は女たちに好かれるそうだが、女に好かれる人間などというものは底が知れている、厩橋侯(酒井忠清)までがまだ疑っておられるが、まあみていろ、おれはもう原田はこっちのものと思っている、まもなくそれがはっきりするだろう」
――いま一つ、申上げたいことがございます。