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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 頁

青空文庫

「罪名はなんだ」

善太夫はがまんを切らしたように、お訊ねの意味が私にはわかりません、どうしていまになってそんなことを訊くのか。かれらが毒を盛ったということは明白で、死罪ということも評定で決定していたのではないか、と反問した。

「おまえを責めているのではない」と甲斐が云った、「私は保養のため留守であった、それで事の始末を聞きたかったのだ、また、念のために云っておくが、罪名は置毒ではないぞ」

「――なんと仰しゃいます」

「毒を盛ったのではない、罪はまったくべつの事だ」

「私にはわかりません」

「明朝、再評定がある」と甲斐が云った、「その評定によって、罪名がはっきりするだろう、置毒の罪というのは誤りだ、そんな事実はなかった、決してなかった、ということを、同役の者に伝えておいてくれ」

善太夫は肩を怒らせた。

肩を怒らせて、善太夫がなにか云い返そうとしたとき、廊下へ堀内惣左衛門が来た。甲斐はそれを認めるとすぐに、「存命か」と訊いた。惣左衛門は廊下に膝をついて、危篤である、というような意味のことを答えた。はっきり聞えなかったので、甲斐はもういちど存命か、と訊いた。

「存命ではございますが」