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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 頁
という気合がとんだ。六郎兵衛が、声いっぱいに絶叫し、板敷を踏む足音がびんと反響した。その瞬間に、石川が相手のふところへとびこむのが見えた。それはすばやいというよりは、むしろ緩慢に吸いこまれる、といったような動作に見え、六郎兵衛の木剣が、殆んど石川の頭を打ち砕くように見えた。
たが、結果は逆であった。六郎兵衛の躯はくるっと一回転し、板敷の上へ仰けになって落ちた。どういう技を使ったのか、見ている者にはまったくわからなかったが、石川は六郎兵衛を投げると、起きあがる隙も与えずに押えこみ、片手を衿にかけて緊めた。
「もういい、それまでだ」と野中が叫び、止めようとして駆けよった。すると、石川はすっと立ちあがり、六郎兵衛はぐったりとのびたまま、絶息していた。
「心配するな、生きている」と石川は静かに云った、「ちょっと息を止めただけだ、放っておいてもすぐに気がつく、それよりも、尾田に話した相談のことはどうだ」
「まあ向うへゆこう」と島田市蔵が云った、「向うの部屋へいって話そう」
「いや、よければここを出てからにしよう、藤沢が表てで待ってる、おれは尾田の返辞がおそいから、ようすをみに来たんだ」