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わたらせがわ

渡良瀬川

大鹿 卓

線上閱讀大鹿 卓《渡良瀬川(わたらせがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 280,528 字 · 557 頁

青空文庫

今朝はただ愚直とばかり見えた彼等の沈黙が、いまはなにごとかただならぬ決意をひそめた沈黙に変っていた。巡査が腕をとって引き出そうとすれば、ドッカリと地面に坐りこんでしまう。呶鳴りつければ白い目を剥いて睨みかえす。誰も彼もみな人が変ったように意固地になったように強腰だった。そうしているうちにも後から後からと人数がふえた。午後一時ごろには三百五十名に達し、構内をあふれて門前の道路を塞ぎだした。

これより先、榎本は被害地の上京委員がしばしば面会を求めに来ることをきいて、一度日を定めて、彼等の陳述を聴こうと思い定めていた。それで、三日の午前十時に官邸に於て会うと通知を命じたのが昨日のことである。今朝は約束通り彼等を待っていた。ところが、その間にどういう行違いがあったのか、委員たちはついに一人も顔を見せなかった。榎本は待ちあぐねて登庁したが、庁舎の門前も前庭も夥しい農民で埋っているのを見て、事態の容易ならぬことを察し、早川秘書官を呼んで応対を申しつけた。

そこで秘書官は玄関に現れて総代の者と話がしたいと申し出た。山本栄次郎、大出喜平、水島与八、小林猶之介、福由和寿蔵、太田重十郎、原金次郎、手島伊勢松、麦倉岩次郎、野口春蔵などが草鞋ばきのまま応接室へ通された。