輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

わたらせがわ

渡良瀬川

大鹿 卓

線上閱讀大鹿 卓《渡良瀬川(わたらせがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 280,528 字 · 557 頁

青空文庫

正造はなにをいっても頑として受けつけなかった。すべて覚悟の前だといって、てんで寄せつけなかった。幸徳も、もはや、どんな言葉も無益だと思いあきらめて、火鉢の炭火をみつめつづけた。木枯が隣り屋敷の喬木をゆすって、軒先へ吹き落ちてきた。窓の雨戸が外から手をかけて動かすような音をたてた。幸徳は火箸をにぎった手をかすかに戦かせながら、沈痛な面持であらためて正造を見返した。正造も悄然として項垂れていた。見るとその袴の膝が一カ所ぬれてにじんでいる。幸徳の目にも涙が光った。理性は、どうしても引き受けることを拒絶しろと強いた。だが、多年の苦闘に疲れ果てた老体を目の前にしては、彼も「私は嫌だ」と振り切ることはできなかった。

幸徳は落葉を踏みつつ正造を送りだして、門を閉めた。二階へかえってランプに石油をつぎ足すと、ただちに机にむかって正造のおいていった草稿に筆を入れだした。首尾段落にわたって推敲を重ね、書き改めて、美濃紙五枚に浄書し終ったときは、すでに夜が明けていた。白紙一枚を表紙につけ紙縒で綴ると、それを懐にして芝口の宿に正造を訪ねた。

その朝、正造は六時に起きて、まだ寝呆け顔の女中にただなにごともない様子で命じた。