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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
線上閱讀岸田 国士《火の扉(ひのとびら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 頁
わしはともかく、北原先生に会いましよう。奥さんにそう言われたなんて言わん方がいゝでしような」
「さあ、それはあなたのご勝手……。所をお教えするわ」
彼女は、立つて、部屋を出て行つた。
ひとりきりになると、市ノ瀬牧人は、これも座をたつて、テラスの方へゆつくり歩を運んだ。なにもかも終つたという感じと、軽い新たな好奇心とが胸に残つていた。
テラスに出て、ふと庭の一ぐうの物干場へ眼をやると、二人の女が何やら言い争つていた。
「あたしはなんにも言つた覚えありませんよ。勝手に気をまわすのよしてちようだい」
こうカン高い声で叫んだのは、四十がらみのでつぷりした女で、簡単服のすそをつまんで胸をそらしている。
「気をまわすのはそつちのことでしよう。弟がたまに遊びにくるのが、どうしておかしいの。いやらしい、いゝ年をして……」
と、これは皮肉たつぷりに浴せかける相手は、三十をいくつも越していないと思われる、色の浅黒い、ゆかたのえりを思いきりぬいた女である。
「とにかく、ひとの洗たく物は勝手に取り込まないでくださいね。部屋代はちやんとお払いしますからね」
「部屋代が聞いてあきれるわ。