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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

「暗いだろう。ドアーの傍にスイッチがあるから、点けてくれたまえ――」

又、次の部屋から、水木の声が、聴えて来た。

だが、寺田は、その声を聞いても、まだ返事が出来ずに、それでも不甲斐なくガタガタ顫える手で、周章て壁を撫廻すと、やっとスイッチを見つけて、力一杯に捻った。

パッとかすかな音がして、部屋の中はくらくらするような光線に満たされると、洵吉が、二三度瞬きしている間に、あの空間に浮動していた巨大な手や、足や、唇どもは、壁に貼られた、それぞれの引伸ばし写真の中に吸い込まれて、「知らん顔」をしているのであった。

(ナンダ写真だったのか)

寺田洵吉は、これが水木の、悪趣味な写真だったのか、と見極がつくと、やっと、※っとした気持ちになったが、それでもまだ胸の動悸が頭の芯に、ジンジン響くのを意識しながら入口のところに突立っていた。

――そうして待つ間、思出すともなく、浮んで来たのは、中学生時代の水木舜一郎のことだった。

洵吉の記憶では、もうその時分から「水木」と「写真」というものとは不可分のものであった。

水木は家がよかった為か、田舎の中学生としては贅沢な写真機を持っていた。