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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁
「あら、気づかれたの……」
その声に、又眼を見張ると、それは艫の方にいて、舵をとっていた小池慶子だった。
「あ、あなたも……」
「ええ、到頭来てしまったの……」
慶子は、ジッと、心もち愉しそうに、中野の顔を見た。
「それでは――、中野さんも気づかれたようですし、失礼しましょう……。もう十分ほどすると、丁度このそばを日本汽船が通りますから間違いなく……」
中野ソックリの男はそういって立上ると、二人に一揖して海に飛込み、そのまま抜手を切って泳ぎ去ってしまった。
中野は、慌ててあたりを見廻した。しかし、いずれを見ても、渺々満々たる大海原の真只中で、とても泳ぎ切れるとは思えなかった。
(そうだ、人工蜃気楼にかくされた日章島が、このすぐ近くにあるんだ……)
と気づいた。しかし、いかに瞳を凝らして見ても、遂にそれは見わけられなかった。
――思って見れば、長い悪夢のようであった。だが、美しい慶子が眼の前で微笑んでいるのだから決して夢ではない。
水平線に、ぽつんと見えて来た汽船が、やがてこの大洋の中の漂流ボートを見つけたのであろう。汽笛を鳴らしながら近づいて来た。
中野は、一生懸命に、彼女とともに手をふりながら、あの日章島では、この自分とソックリの男たちが、慶子ソックリの女たちと共に、生活し、恋愛しているのかと思うと、ふと、もう