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かせいのまじゅつし
火星の魔術師
蘭 郁二郎
線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁
「そう……そういえば成るほど……」
「あたし、この唄、唄うと、とても怖いの……だって
密やかに慕寄る 慰めの唄
っていうところに来ると、急に調子が上るんですもん……熱でいえば四十度位になるんだわ……恰度あたしその高くなるところに来たような気がするの、きっと今にも熱がぐんぐん上るわ……」
こういってマダム丘子は、いつもの朗らかさに似合わぬ、荒涼とした淋しさを、美しい顔一杯に漾わすのであった。
(なァに、いくらか体の変調のせいだろうさ……)
と思いながらも、私自身、ついその気味の悪い唄を口吟んでいた。成る程、その楽譜に踊るお玉杓子のカーヴは正弦波となって、体温表のカーヴと甚しい近似形をなしていた。
結核患者の妄想的不安と思いながらも、ハッキリ否定することの出来ぬこの患者独特の潜在恐怖と、極めて尖鋭された神経の痙攣を半ば不安な気持で、じっと見詰めているより仕方がなかった。
この麗魔のように思われていたマダム丘子にも、こんな末梢神経的な、それでいて、居ても立ってもいられない恐怖を持っているのかと思うと、既つて考えても見なかった可憐な女性を、そこに感ずるのであった。