輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

あんな事、いわなければよかった――、その悔恨が、時と共に、もくもくと拡大されて行った。

沼のようなこの部屋へも、時々観衆のざわめきと、拍手が潮のような高低を持って、伝わって来た。

突然、小屋の向うから、ジンタの奏曲が始った。そして、その悄悵として、儚い音色のクラリオネットが、「ここは御国を」などの、聴き馴れたものを、一つ一つ教えこむように吹き鳴らす時、黙々と聴入った黒吉の胸の中には、何かしらぬ熱いものが、音もなく押上げられていた。

彼は、久しく忘れていたものに、眼がしらが潤むのを、唇を喰縛ってこらえた。その時、がたッと背後の方で音がした。

(親方?)

黒吉は、ハッとして目を拭うと、背後を振向いた。

そこには汚れた鼠色の幕が、風を受けたように、重そうに揺れ、その幕の下と、床板との二三寸の隙間から、衣裳用の箱か何かが横倒しにされたのが、僅かばかり見えた。

彼は、ジッと、その仕切りの幕を、凝視した。彼は見たのだ、振向いた瞬間、極く瞬間ではあったが、その幕の中程にある小さいカギ裂の向うに、ちらりと動いた、白い手を。

(葉ちゃんだ……)

彼は、そう直感した。