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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

「ほ、ほ、ほ、何んだと思ったわ、わざわざ呼止めておいて。いやな黒ちゃん」

葉子は、如何にも、莫迦莫迦しそうに、腰を浮かせた。

「ま、待って」

黒吉は、周章て彼女を戻すと、

「一寸待って、訊きたいことがあるんだよ……葉ちゃん、怒らないでね。どうして、俺が嫌いになったんだい、何故」

思い切って、いってのけた。

「あら、誰がそんなこといったの」

つぶらな艶黒な眸が、むしろ、好奇的だった。

「誰って、誰もいわないよ。俺が、只、そう思うんだ」

「まア、いつあたしが、あんたを嫌いだといったの、そんなことないわ」

「だって……口ではいわなくても……そうだろう、と思うんだ。

せんはとっても親切にしてくれたじゃないか、俺アせんの方がよかった。みんなに下手い、下手いって、嗤われたって葉ちゃんだけは、笑わなかったし、元気づけてくれたし」

黒吉は、くどくどと話しながら、自分の言葉に、瞼が、熱っぽく膨れてくるのを感じた。

「そんなの、あんたの僻よ。あたしが褒めなくなって、皆んなが褒めるだけ、上手くなったじゃないの」

葉子の顔も、蒼白く、固まった。

「俺ア皆んなに褒められるより、葉ちゃん一人に褒められた方が、ずっとずっと嬉しいんだ。