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かせいのまじゅつし

火星の魔術師

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《火星の魔術師(かせいのまじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,120 字 · 302 頁

青空文庫

そして、腰から……、ああ、腰から……いくら撫ぜてみても、彼の手はそこまで来ると、ストンと敷布の上に、落ちてしまうのだった。

ああ、

(俺には右足がない!)

(俺にはもう右足がなくなっているぞ!)

幾重にも捲かれた、厚ぼったい繃帯の下で、額がネットリと汗ばみ、全身の血がスーッと引いてゆくのを感じた。あたり一面、毒瓦斯でも撒かれたように、息苦しくなって来た……。

(俺は恐ろしい不具者になってしまった)

一体、これからの浮世を、何に寄って凌いで行けというのだ。

余りにも無残な、自分の運命に、泪も枯れ果てていた。

どうせ切落すなら、一っそ一思いに、左足も、右手も、左手も、サッパリ切ってしまえばいいのに……。どうせもうこの俺には、あの空を飛べないのだ……そうだ、あの空を飛ぶことが出来ないのだ。

――すると……。黒吉の頭には、あの曲芸の持つ、不思議な空の感覚への憧れが、奔流のように、渦を巻いて飛散るのであった。

(もう一度、もうタッタ一度でいいからあの快感を、心のままに味わってみたい……)

八ノ三

翌日になって、黒吉は、もう片足のことはすっかり諦めてはいたが、それでも、