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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
……元成どの、どうか末長く連れ添うてやってください」
こう聞くと、元成も卯木も、ただ涙になってしまった。
外の風雨は、いよいよ烈しい。
大屋根の雨樋をあふれる雨水が、軒に滝をなしている。
その咆哮に急かれるように、正成は「……元成どの。思い過ごし召さるな」と、顔を振って、すぐ次の語へ移った。
「ここで二人を処置するの、成敗するのと、そんな心は毛頭ない。ただ二人の倖せを祈るだけです。……卯木」
「……はい」
「大きゅうなったなあ。いや、そなたの乙女ざかりを知らぬゆえ、見違えるばかりだが、こうしておる間に、そぞろそなたが、幼顔に返って見ゆる」
「兄上さま。おなつかしゅうぞんじまする」
「おお、よく訪ねて来た。正成もいちど会いとう思っていた。さるを無情い兄と恨んでくれるな。お汝ら夫婦を、この地におくことは相ならぬのだ」
「よう、わきまえておりまする。なんでお恨みなどを」
「勿体ないが、亡父の遺領を継いだればこそ、正成もこうしているが、本心、割って申せば、野や町に、気まま暮らしでいられる一軒が羨ましい。が、一族を抱える多聞兵衛正成は、そうもまいらぬ」
「……また、聞けば」