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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁

青空文庫

「おっ探題殿ですか。およろこび下さい。ついに今暁、深草の辺で、日野朝臣の足どりをつかみ申した。これよりその隠れ家を襲うところ。いずれ晩までには、引ッ縛って、白洲の御見に入れましょう。御免ッ」

と、いうやいな、鬼六はまたすぐ、宙を飛んで駈け去った。

それからまもないうちのこと。

本庄鬼六の指揮のもとに、約三十人ほどの捕兵が、加茂の東からちりぢりとなって、対岸二条の辺へ、徒渉りに渡っていた。

「かたまるな。もっと散らばれ、散らばれ」

半数は陸の街なかを。鬼六たちは、堤の蔭を河原づたいに、やや上流へ向って行った。

――とも知らず、この朝、当の日野俊基は、元結を解いて、菊王に髪を結わせていた。

所は、法成寺址のさる伶人(雅楽寮の楽師)の家だった。――それもゆうべ深夜に叩いて一宿を乞い、そして今朝は、なんとしても、ここから宮中へ出仕せねばならぬと、心で誓っている俊基でもあった。

先ごろ、突如、六波羅の大検挙が一せいにおこなわれた日には、彼は運よく、家にはいず、宮中にもいなかった。

出先で変を知ったのだ。彼が、軍需の調達について、日ごろ相談相手としていた刀鍛冶後藤助光の別宅が深草にある。