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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
――朝堂八省の内門へ駈け入ろうとするのらしい。
けれど裾を曳く彼と、精悍な鬼六の軽装とでは、比較にならない。あげくに、俊基が、大きな松の根につまずいたので、鬼六の姿は、もうその背へ手のとどく所へ来ていた。
「捕ッたっ」
耳もとを搏って来る鬼六の声と、そしてその腕の下とを、
「下郎っ」
俊基は、からくも、掻いくぐって、
「――宮闕だぞ。ここは宮闕なるぞ。退されッ、退され」
もう一つ、身を、翻しながら、一顧の眼じりを裂いて叫んだ。
鬼六は、あざ嘲った。なおも吠えた。
「なんだ宮闕とは。天皇の住もうている御所のことか」
さらに、飛躍の踵とともに、
「宮闕、合点だ!」
とばかり、ぱッと組みついた。そしてたちまちひと番いの闘鶏に似た二人が羽毛を散らすように縺れ合い、待賢門内のチリひとつない敷砂を蹴ちらした。
死力であった。でんと、肩越しの投げを食ったのは、鬼六の方なのである。鬼六としては、ぜひとも、手捕りにせねばならないだけに、意のままな武力がしぼり出せず、そこに弛みがあったものか、
「しゃっ。不覚」
こう自分を罵詈していた。そして反動的に跳ね起きるやいな、
「逃がそうか、悪朝臣」