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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁

青空文庫

時宗は、洞察していた。――両統のもつれの因は、一面後宮の女情にもある。さても厄介厄介、と。

なるほど、それは入りくんでいる。

後深草の皇后、西園寺公子は、父帝後嵯峨の未亡人――皇太后の子――の妹であったから、叔母甥の仲であり、叔母が妻でもあったのだ。

しかし、公子には皇子がない。皇子は、べつなみ妃、玄輝門院がお持ちだった。

ところが、この玄輝門院の姉は、また、亀山天皇の皇妃であった。――つまり姉妹ふたりの、姉の方は弟に嫁し、妹は兄の妻――という逆交叉の形になる。

この上に、皇太后の西園寺※(「女+吉」、第4水準2-5-48)子が、亡き後嵯峨の偏愛を、とかく強く奉じていた。――下々にもありがちな、感情上の、臆測しがたい事情も潜在していたにちがいない。しょせん、これの明断などは、いくら幕府でも、よくなしうるものではなかった。

そこで時宗は、あっさり言ってのけた。いや諫言を奉った。

「――皇室の御内事は、皇室でおきめください。ただ、申しあげておくことは、いつの時代でも、皇位の不自然な継承は乱の基です。御一考を要しましょう」と。

幕府側の諫告は、なおもそれに附言していた。