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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
そのうえ、本間山城ノ入道も、黄門どのへは、かなり寛大な待遇を与えていた。――で一ト年、日野俊基が、山伏姿となって、この島へ忍び渡って来たときも、日満の手びきではあるが、密かに、両者は一ト夜を語り合って別れている。
だからおそらく、黄門どのの胸には、他日を期するものがつい先頃まではあったであろう。ところが、今年の五月に入ると、本間家の態度は一変し、都における宮方大検挙のうわさも同時に聞えていた。
黄門どのが、それまで日課として来た“法華経序品”の写経を、さらに専念しだしたのは、それからで、たちまち五月末には全八巻を写しおえ、巻末に、
元徳三年五月二十一日
亡父追善ノ為ニ之ヲ写
前ノ黄門ノ侍郎資朝
と、奥書して、
「いざ、死はいつでも」
と、心支度の容子であった。
するとまもなく、都から一人の山伏に付き添われた少年が島へ渡って来て、本間山城ノ入道へ、訴願した。
少年は、日野阿新丸といい、黄門どのが、都にのこしてある幾人かの子の長男だった。
聞けば、この四月、阿新丸の祖母――黄門どのには実母にあたる者――が高齢で病死したというのである。
配所の父へ、それも告げたし、また一と目でも、父の無事な姿を見たい一念で、母のゆるしを得、はるばる島へ渡って来たという陳述だった。