輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
或る日、物見櫓の下で、すれちがッた一少年がある。城内には小姓や下屋の童も多い。しかし、どこか眉目が違う。右馬介は「この和子だな」と直感したので、すれ違いざま、こころみに、
「くまわか様」
と、小声で呼んでみた。
少年は振り向いた。そしてニコと笑った。しかし何も答えず小走りに去ってしまった。
その後も、その少年の姿を、右馬介は、まま見かけた。
――或る時は、本間三郎の小姓の中に。
また或る折は、城の物見の上に立って“鳥も通わぬ”というこの佐渡の空や海を眺めてでもいるような姿も見た。
つねに居る所の、小部屋も分った。物見やぐらの下の、薄暗い廊の角の一室だった。
そこの前を通ると、独り机にむかって、読書していることもある。
「もう間違いはない」
右馬介は、機をうかがって、近づいた。――が、人に近づかれるのを恐れるような眼ざしで、少年はすぐ警戒した。
「たれだい、おまえは」
「柳斎という具足師でございますよ」
「なんの用?」
「お淋しゅうございましょう」
「ううん。ちっとも」
「だって、都には、お母ぎみが、さぞお待ちなのでございましょう」
「……柳斎。あっちへ行っておくれ。