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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
私たちの身の上を、ようご存知らしい、おん僧は?」
「思いつかれぬかの」
「さあ、どうも」
夫婦して小首をかしげ合う様を、法師の方は、もう旧情にみちた眼皺で、
「……ではやはり、お辺は、服部治郎左衛門に違いなかったか」
「赤面至極にござりまする。むかし名を、仰っしゃられては」
「また、お内儀もそのかみは、後宇多院のみ后、西華門院のお内で、雑仕の卯木と仰せありし小女房でおわしたの」
「……はい。もうおつつみは申しませぬが、そも、あなた様は」
「わしか。……わしは近年、洛中では吉田の神護院に宿借いたしておるので、吉田のすね法師だの、吉田の兼好などとよばれておるが、それでは、思い出されもなされまい」
「兼好さまとな」
「いや、まったくは、治部ノ少輔兼顕の三男、卜部兼好でおざるよ。……俗の名を取ってそのまま、今は兼好法師と呼ばれておるが」
「おっ。……それでは、やはり後宇多法皇の院御所に、北面(院ノ武者)としておいで遊ばした左兵衛ノ尉兼好さまでございましたか。……まあ、なんたるお変りよう」
「はははは。おたがい、わが身の変りようは、さまでとも気づかぬものか。この兼好も、近ごろは人に、卜部兼好かと、昔名を問われたことなど、とんとない。