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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
それかあらぬか。
以後は、検非違使の手の者が、夜となく昼となく洛中を徘徊して、あだかも、六波羅の放免(密偵)組にたいする宮方の諜報陣のごとき観を呈した。
当然こんな時勢の爪は、恋する者の花園をだんだん狭くするか茨にしてゆく。といって、抑えられないのが若者の炎でもある。――或る暁ちかく、西華門院の御築土の下で、不審な若者が、見廻りの警士につかまった。
若者は、烏丸家の侍、服部元成だった。
二日ほどして、彼の身柄は、検非違使ノ庁から、烏丸殿の手へひき渡された。「……以後は、ご注意ください」という内々な諭告のもとに。
が、このことがあってから、ふたりの恋は、あらわに、人の口端にのぼって来た。「――烏丸どのが御自慢の家臣元成と、西華門院の雑仕の卯木は、火もおろかな仲とみゆるが、さて、千種殿の弟君が、だまって指をくわえていようか」などと。
かねてから、卯木へは、さかんに言い寄っていたもう一人がいたのである。宮方一味の急先鋒と目されている千種忠顕の弟とやらであった。
恐るべき競争者がいることは、元成も知っている。――だが彼の情火は、検非違使の諭戒も、あるじ成輔の、