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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
二人はどなっていた。
ここは金剛山の西の麓だ。中腹の千早、赤坂などより、ずっと下だが、もう山裾の一端にはかかっている。
佐備ノ郷龍泉の里という。
兄の楠木正成は、ほど近い水分に“御本屋”として、さらに大きな山館を構えているが、弟の正季は、べつに一邸をここに持っていた。
「やあ、両所か」
やがて、正季自身。
「さ、上がられい。――今日は侍どもから下部まで、水分神社の雨乞い祭りの用意に出向き、屋敷は、このとおり無人の涼しさだ」
「いや、上がるまい」
「なぜ」
「じつは、加賀田のお師のお言伝けで、帰りを、ここへ廻って来たわけ。何かと、お忙しい中だろうし」
「なんの、忙しい数日はもう過ぎて、明日よりは、建水分の舞殿にて、山田小美濃の申楽一座が、雨乞い神事の一つとして催される。あらまし、準備はできたのだ」
「さ、そのことだが」
「なに。お言伝けとは、雨乞いの件か」
「そうだ。――今日、加賀田ノ山荘へ伺ったところ、お師(毛利時親)の仰せには、この旱の下の農民どもにせがまれて、明日より水分にて、申楽奉仕の雨乞いを営むらしいが、すぐ行ッて、延期させたがいいと、申される」
「……いまさら」