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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 頁
いやそのため、楠木家では、山田申楽を勧請して、三日間の雨乞いをすることにはなったのだが、しかし、それも「――兵法を知らぬものだ」と、加賀田の隠者時親は、嘲っているというではないか。
「――時早し、延期せよとの、お師の御意見だが、さて今日となったこと、兄の正成どのは、何というか?」
正季はやがて、水分神社の石段の下で、駒を下りた。
どの松の姿もいい。社殿は、その松蔭に神さび、一つの峰いただきに位置して、附近の山里の屋根を下にしている。
「お。龍泉殿がおいでた」
あすからの準備に、大童で働いていた工匠だの、神官や村人までが、正季の姿に、一とき手をやすめて、礼をした。
土地呼びでは、彼のことを、“龍泉殿”というらしい。
「ご苦労だなあ」
正季は、一同をねぎらいながら、神職のひとりへすぐ訊ねた。
「兄上はどこにおられる?」
「はっ。御本屋様には、つい今し方、お帰りでございました」
「何、はやお戻りか」
「あらまし、明日の準備を御覧のうえ、社家に泊っている山田小美濃以下の申楽衆へ、御色代(あいさつ)など、あった後、ごきげんようお立ち帰りで」
「恩智は」
「お奉行は、おられまする」