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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《美少女一番乗り(びしょうじょいちばんのり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 頁

青空文庫

帛を裂くような叫びが聞こえて、熊はぴたりとそこへ踏止どまった。

「何をするんです、また弱い仲間をいじめているんでしょう。悪さをするとお弓は承知しませんよ」

そう叫びながら、檜の密林の中から一人の美しい少女が跳び出して来た。――年は十五、六であろう、山桃の実のような血色のよい頬、つぶらな澄んだ眸、丈長の髪を背に結んで下げ、こんな山奥には珍しく着ている物も雅びていた。

「――あら!」

少女は低く驚きの声をあげた。大刀を右手に半身を起こしている男の姿をみつけたのだ、しかし――そのとき若い武士は、熊の危害から免れた気のゆるみと、重傷の痛みに耐えかねたとみえて、くらくらとそこへ昏倒してしまった。

「五郎、こっちへおいで、五郎」

少女は急いで熊を呼戻すと、そのまま森の方へ立去ろうとしたが、倒れた手負いの苦しそうな呻き声を聞いて恐る恐る引返し、

「どうかなさったのですか?」

と声をかけた。――しかし相手はもう答える気力もないらしい、見ると半身ぐっしょり血にまみれている。

「まあ……」

少女はさっと顔色を変えたが、すぐ意を決してしっかりと抱起こした。

「五郎、おまえの背中をお貸し、この方をおまえの家まで運んで行くのよ、――そっちを向いて、さ、お坐りおし」