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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《美少女一番乗り(びしょうじょいちばんのり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 頁

青空文庫

「はい、すぐでございますか」

「お金を持って行くのだから、日の暮れないうちがいいだろう」

と言っているところへ、小僧が足早にやって来て、

「津田様がお見えになりました」

と伝えた。

「ああいけない」

藤兵衛は膝を叩いて、「今日お届けをすると言っておいたのについおくれた、――すぐここへお通し申しておくれ」

「畏まりました」

小僧が去ると振返って、

「与吉もお嬢さまも向こうへ行っていて下さいまし、先方からお金を取りに来るようならもうしめたものです、うまくすると案外早く話が運ぶかも知れません」

「まあ嬉しい、本当にそうなるといいわねえ」

「今日こそしっかりと掛合ってみます」

藤兵衛は力強く微笑した。

お通は奥へ、与吉は店へ、二人が去って行くと間もなく、島津家用人の津田直記が入って来た。――藤兵衛は慇懃に迎えながら、

「ようこそ、さ、これへどうぞ」

「どうだ、だいぶ日も経つが宋朝の冑はみつかったか」

むずと坐りながら、直記は大声に言った。

「早く致さぬと取返しがつかぬぞ」

「は、種々手を尽くして捜しまするが、まだ……」

「捜し出す事は出来ぬか」

「たとえ神通力をもちましても」

と藤兵衛は、唇で笑いながら、「向島の荒神杉のあたりとは知れますまい」