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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《美少女一番乗り(びしょうじょいちばんのり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 頁

青空文庫

「そういう訳で、決してわたくしが水牢へ入れたなどという事はございませぬ。それでも御不審が晴れませぬなら、どうぞ島津様へお問合わせ下さいますよう」

「そうか、それでよくわかった」越前守は頷いて、

「藤兵衛、与吉、それに相違ないか」

「は、――恐れながら相違ございませぬ」

もう嘘だとは言えなかった。二人が恐れ入って平伏するのを、しばらく越前守は見やっていたが、

「ついては改めて訊ねるが。店より召上げて来た帳簿と金箪笥、くわしく取調べたところおよそ一万両近く不足している。しかも治兵衛が島津へ去った後の事だが、これだけ多額の金子を何に使用したか、――藤兵衛」

「は、……それは」

「申してみい、この度は偽を言うと赦さんぞ」

「与吉申し上げます」

思い切ったように与吉が面をあげた。

「実は主人治兵衛を助けいだしますため、島津家御重役の方々へ礼金として差上げ」

「黙れ黙れ!」越前守は大声に叱りつけた。

「町人共なら知らぬ事、仮にも島津家御家中の武士たる者が、不正の賄賂などに眼を眩まされると思うか。――藤兵衛、面をあげい」越前守はぴたっと扇子で畳を突き、一分もすかさぬ鋭い調子で言った。