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そうもくちゅうぎょ

艸木虫魚

薄田 泣菫

線上閱讀薄田 泣菫《艸木虫魚(そうもくちゅうぎょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,254 字 · 226 頁

青空文庫

それほどまでにあの頃の相撲は溌溂としていた。伸びゆく生命そのものを見るような感じがあった。

二人の話はおのずと好きな方へ向いて往った。徳富氏は黒い大きな塵よけ眼鏡の奥から、眼を光らせながらいった。

「昨日一日合併相撲を見ましたが、大阪方の若島は強いですね。手もなく荒岩を投げつけましたよ。荒岩の一生にあのくらい手綺麗に投げられたことは、二度とないかも知れません。ことによると、常陸山なぞもやられないにも限らない……。」

「若島はいい力士ですが、常陸山に勝とうなどとは思われない。」

私は客の言葉に承引が出来なかった。

「いや、勝つかも知れない。」

「分でゆくと、まず七三かな。」

「いや、そんなことはない。五分五分だ。」

「まさか……。」

二人は暫くそんなことをいい争っていたが、ちょうどそこへ外の来客があったので、話はそれなりになってしまった。

その場所での両力士は預りで、誰が見ても八百長の臭みが高かったということだった。

すると、その翌月だったか、合併相撲の顔触をそのまま京都へ持ち込んで、花見小路で興行したことがあった。その楽の日に若島は常陸山につり出されて負けたが、若島としてはなかなか分のいい相撲をとったので、ひいき客のある人が祇園下の料理屋へこの力士を招いて、言葉を極めてその日の相撲ぶりを賞めたてたものだ。