輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

とうじゅうろうのこい

藤十郎の恋・恩讐の彼方に

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《藤十郎の恋・恩讐の彼方に(とうじゅうろうのこい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 37,146 字 · 74 頁

青空文庫

その頃です。私はある男を――この頃の若い人達の言葉で云えば――恋するようになったのです。笑っちゃいけませんよ。お祖母さんは懺悔の積りで話しているのですから。その男と云うのは役者なのです。後家さんの役者狂いと云えば、世間に有りふれた事で、お前さん達も苦々しく思うでしょうが、私のは少し違っていたのです。私が恋したその役者と云うのは、浅草の猿若町の守田座――これは御維新になってから、築地に移って今の新富座になったのですが、役者に出ていた染之助と云う役者なのです。若衆形でしたが、人気の立たない家柄もない役者でしたが、何故かこの役者が舞台に出ると、私はもう凡ての事を忘れて、魂を抜かれたような、夢を見ているような、心持になってしまうのです。何でもこの役者は、大谷友右衛門と云う上方の千両役者、今で云えば鴈治郎と云ったような役者の一座で、江戸に下ったのだが、初めは、江戸の水に合わなかったと見えて、舞台へ出てもちっとも見物受がしないのです。どんなに笑っても、きっと顔の何処かに憂の影が、消え残っていると云ったような淋しい顔立が、見物には受けなかったと見えるのです。また、この役者の動作が、何処までも質素なのです。