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ゆきぐにのはる
雪国の春
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《雪国の春(ゆきぐにのはる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,000 字 · 266 頁
他府県でも聞く反千円の相場は、陸前のヤチ田にも稀れでなかった。よく言っても経済知識の欠乏、悪く言えば病的の現象だが、どうせむだ使いに捨てる金だからと弁護する人があるかもしれぬ。とにかくこうして手に入れた田なら、よくよくでなければ売り放すまい。つまりは誰かの希望のように、いたって確かな小農地主のできたことのみは事実で、ただそれまでに土地の所有に恋いこがれる者に、何とかして一反の金で二反の田を、持たせてやりたかったと思うのみである。
昨年の秋とかにも古川町の芝居小屋で、大規模の田の糶が行われた。数週前から売るべき田地を一筆ごとに、所在番号その他を掲げて公告し、なお印刷にも付して広く回したようである。骨董品より始末の悪いのは、ほしい人にあきらめと算盤とのないことである。その上にまだ仲に立つ才取りのような者があって、鞘を取って売るつもりで、一時買っておいてまた糶らせる。小さくすればするほど高く売れるとは当然の事ながらことに気の毒笑止である。こんな例は決して二回や三回でない。まずは米高初期以来の地方的流行であった。一時中絶していてもまた起こるに相違ない。地主にとっても利益のことではなく、門閥の大木に根廻しをするようなもので、もしその売上金が紙数ばかり多いこのごろの株券にでも変わっておれば、あまりに覿面な結果であっ