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ゆきぐにのはる
雪国の春
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《雪国の春(ゆきぐにのはる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,000 字 · 266 頁
早くそういう薄暗い時代が去ってしまえばよいと思う。
文学と文字と、この二つのものの混同は昔からであった。もし迷信ならば歴史ある迷信である。たいていの国には文字という語から絶縁した文学という語はないのである。文学はすなわち文字をもって書かれたものということで、文字あって始めて文学ありという考えから、最初はそれ以外のものを文学の中には入れなかったのである。しかもその断定の条理がなかったことは、日本人ならばすぐにわかる。例えば『万葉』にはその輯録の時から、数百年前の歌まで載せてある。『古事記』『書紀』には神代以来の尊い物語のいろいろが伝わっている。それらがわが国に発生した全部でないとする以上は、文字以前の文学というものがあると同時に、文字以外の文学というものも、また少なくとも上代には盛んであって、文字の教育の普及とともに、だんだんとその区域を縮小してきたことも推測にかたくないのである。そうしてこの内外の二種の間には、各時代を通じて不断の脈絡系統こそはあったが、雅俗貴賤というがごとき類の差別は、本来は少しもありえなかったのである。
もちろん文字によってまず征服せられたのは、朝廷または寺院周囲の文学であった。